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ギターマダガスカル

STAFF|音楽が、色めき立ち上がらせるものを撮りたかった

監督・脚本:亀井岳 Takeshi Kamei

マダガスカルの音楽が好きで『ギターマダガスカル』の制作をはじめたけれど、現地に通いだすと、そこに住む人々の持っている世界観に引きつけられるようになった。それらは僕たちにとって全くの未知ではなく、我々から失われてしまいそうになっていて、それでも、かすかに体に残っているようなそんな感じがしたからだ。

マダガスカルを農作業が暇になる乾期に旅をすると、あちこちで、“葬式”や墓から祖先の遺体を出して遺骸に巻いてある布を巻き替える“ファマディハナ”の儀式に出会う事が出来る。それらはたいがい伝統的な楽団が呼ばれ、賑やかに行われるので、演奏会かと思うぐらいだ。地方に向かう国道でも長距離乗り合いバスいわゆる“タクシーブルース”の屋根の上に棺桶を乗せて走っているのも見かけるし、劇中でも短いカットだけども客死した身内の亡骸を小さな箱に入れて故郷に運ぶ一団の様子もある。つまり我々日本人の生活と比較してもマダガスカルの人々にとって“死”は身近なものだ。

マダガスカル人にとって“死”が身近なだけではなく、死者もまた身近にいる。“死”はこの生きている状態から祖先になる1つの区切りでしかなく、祖先は目には見えないが、感じ続けられる存在として普段の生活の中に同居する。つまり死者ではなく祖先なのだ。私たち日本人にもお盆という祖先の霊と交流する先祖供養の風習があるが、亡くなった人々の存在を感じるほどの感覚は今ではないように思う。

マダガスカルの人々は“死”が窓口となり、我々より明らかに大きな世界と結びついている。そしてそこには広大なイマジネーションがある。明確に豊かな世界がそこにあるのだ。前作『チャンドマニ』では自然と人の営みの中から生まれる文化の豊かさをテーマにしたが、マダガスカルで音楽と表裏一体の死生観に出会い、人と自然を超えていく生命の連鎖がテーマになったのは、むしろ必然であったと思う。

マダガスカルでは誰かが楽器を手にとり音楽がかき鳴らされると、木々がざわめき祖先も踊りだすような空気内の湿度が一瞬に沸点に達する、そんな“色めき立ち”がある。出来ればそんな感じを映像化したいと思ってこの作品を作った。

Takeshi Kamei/1969年生、大阪府出身。大阪芸術大学美術学科卒業、金沢美術工芸大学大学院修了。
2001年、造形から映像制作へと転身。07年モンゴルの旅でホーミーと出会い、09年『チャンドマニ~モンゴル ホーミーの源流へ~』を完成。渋谷UPLINK、新宿ケイズシネマ、横浜シネマジャック&ベティ、京都シネマ、大阪第七藝術劇場、鹿児島ガーデンズシネマにて公開。かねてから、敬愛していた音楽に端を発し、2014年『ギターマダガスカル』完成。

撮影監督:古木洋平

Yohei Kogi/1981年生、鹿児島県出身。大阪芸術大学写真科中退後、写真の制作活動と平行して映像表現を学ぶ。
約1年の中南米撮影旅行中に亀井と出会い、『チャンドマニ』撮影監督として参加。『ギターマダガスカル』でも撮影を担当する。他にも、アーティストのドキュメンタリーや、音楽ライブの演出映像や記録などを国内外で制作している。

編集:橋本健太郎

Kentaro Hashimoto/1986年生、京都府出身。高校卒業後、実家の自動車整備工場で整備士として働きながら独学で映像制作を始める。知人に依頼され制作した作品のひとつを見た撮影監督の古木から、『ギターマダガスカル』の製作に誘われる。現地では撮影補助として参加し、帰国後は主に編集を担当。

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